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初めての海外旅行(1)

投稿日: 2008年6月17日

チョコレートの聖地巡礼物語

Divinus Cibus を探し求めて50余年

初めての海外旅行(1)

私がチョコレート屋の倅として生まれて初めて、私の心胆を寒からしめる衝撃を受けたのは1965年6月14日、スイスのチューリッヒにあるリンツの工場見学をしたときのことである。リンツの製品の裏面を見れば Lindt & Spruengli と表記されている。シュプリュングリはチューリッヒの目抜き通り、バンホーフシュトラッセにあるチョコレート、ケーキの専門店である。2階はカフェ。リンツの工場の規模は巨大なものでチョコレートの一次加工、二次加工の工程は私の想像を遙かに超えるものであった。当時の最新鋭機カーレモンタナリーのロータリーコンチェが10基並んでいるのも壮観であったが、水平コンチェが100台稼働しているのをみて仰天した。あぁ、ここは正しくスイスだ!一次加工をすませた原料がストレージタンクに収まっているのは当然のことであるが、ココアケーキがそこかしこに山のように積んであるは異様であった。なぜかと聞く。昨年、カカオビーンズの相場が安かったから将来の反騰に備えてストックしているのだ、とこともなげにいう。これが世界のチョコレート工業の現状だと瞬時に悟った。二次加工の板チョコ、プラリネ、シンチョコ(リンツの代表的製品-Swiss Thins-)の自社組み立ての機械ラインの整然としていること、包装部門の包材がすべて自社で印刷されていること、ギフトボックスもインナーカートンも印刷、製函されている。チョコレート工場にあらゆる印刷機や製函機がインプ ラントされていることを目の当りに見て唖然とした。さらに驚いたことはシュプリュングリの製品が別棟で、ハンドで製造されていることだった。協力工場と銘打って下請けに出している国とはわけが違う。シェルモールドも伝統に則ったむかし流の作り方で、フィリングもすべて一個一個手で絞っている。シュプリングリのプラリネやトリュフをこのように職人が丁寧に作っているのを知ってこの会社に最敬礼をした。考えられないことである。頑なに職人技を守るかと思うとその一方で巨大な原料サイロを天空に高く聳え立たせマスプロを行っている。製品出庫現場をみた。在庫とピッキングはすべてIBMのコンピュータによって管理されていた。この重層的な構造をもったチョコレート工場はリンツだけではなかろうか。チョコレート工業は装置産業といわれているが、巨大な装置の隣の棟に19世紀の伝統に則ったハンドメードチョコレートを作っているとは信じられないことであった。中小企業のチョコレート屋の倅が世界のチョコレート工場を見学して自社の工場を改善する任務をもって遙々ヨーロッパにきたが、世界のチョコレート業界の現状を肌で実感した今、とても親の会社を引き継ぐ気にはなれないと考え始めていた。チューリッヒの街には中東のオイルマネー成金がスイスの高級時計を買いあさっていた。そんな空気を読み切ってカカオビーンズの反騰を予想するしたたかさに舌を巻いたのはその後帰国してまもなくのことであった。トンあたり20万円前後であったカカオビーンズが、またたく間に100万円を突破したときであった。1965年の渡欧は弟がECCパリ本部を退職して間もはいときであった。多くのチョコレート工場、製造機械、包装機械メーカー、菓子専門学校、菓子業界誌を歴訪出来たのは、彼の力によるところが大きかった。また日本チョコレート工業協同組合の取引先である東綿、兼松、イリエス商会の世話になった。弟の紹介でパリのショコラティエ、クルヴォアジェ、私の学友であり大阪青年会議所のメンバーであった辻静夫と5月26日に羽田を発ち、パリのオルリー空港から直接、SOPEXAを訪問してパリのコンティネンターレ チョコレート、ゴディヴァ、コート ド フランス、マルキーズ ド セヴィニエ、フォーション等に口をきいてもらった。辻静夫はSOPEXAではちょっとし た「かお」であった。カルマベルンラインサパール、ロラン フェアラーク (Lorran Ferlarg)(スイス)、モッタ、アレマーナ、サンタンブロージュ、カーレモンタナレー(イタリア)、ハインル、ヘラー、デーメル(オーストリー)、カイゼル カッフェ、シュルックベルダー、バイエル マイシュターゾリンゲン菓子専門学校(ドイツ)、ミケルセン、ミクロベルク(デンマーク)、ストックホルム青年会議所 (スエーデン) を経巡って6月25日に帰国した。

                                     <つづく>

復刊にあたっての新たな挑戦   

マスプロ、マスコミ、マスセールで中内功が唱えた「良い品を、どんどん安く」の時代はお題目に終わった。真に良い品を安く売るという商人の本道を探るため新しいコミュニケーションツールを使った実験も行いたい。友人の一人に「地球探検隊」の中村伸一がいる。彼はHP、メルマガ、ブログという現代の3種の神器で「創造する旅」という商品の販売に成功した。私もこの3種の神器を使ってグローバル ナンバー ワン、グローバル オンリー ワンのチョコレートの販売に挑戦したい。「地球探検隊」のもう一つのツールが各地でひらかれる「交流会」である。我々はチョコレートの「テイスティング パーティー」で手作りチョコレートの講習会を行うようなアイボール ミーティングを計画している。

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fumi23さんのコメントにポールマルコリニーもゴディヴァもそれぞれ独自の味とプレゼンテーションを持っています。前にも書きましたがベルギーのチョコレートはどこでも美味です。原料チョコレートがかの名高いバリー カレボーを使っているかぎり大差はありません。しかし、これらは世界的なブランドですからもはやマスプロダクトであることは紛れもない事実であります。この対極にある職人のハンドクラフト(ショコラティエ)の製品について、後々、述べていくつもりです。

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