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初めての海外旅行(4)

投稿日: 2008年7月6日

1965年6月4日。パリからミラノへ。

モッタの工場見学。東綿とカルレ・エ・モンタナーリ(Carle & Montanari)のおかげで最新鋭設備
のミラノ工場の見学ができた。工場見学には厳しい規定があって滅多に見られないらしい。工場見
学中はカルレ・エ・モンタナーリのトレモラダ氏の傍から絶対に離れないよう厳しく言い渡され
た。メモも厳禁。設備の一切を仕切っているのがカルレ・エ・モンタナーリだった。

地下1階、地上5階建ての工場の1次加工は地下1階と5階で行われ、完全連続自動生産であった。
地下1階にストックされている様々なカカオビーンズは、エアーコンプレッサーによって所定の量が
4種類のチョコレート原料を作るためにシューターを通って5階へ上がっていく。ビーンズの組み合
わせと量が自動的に計量される精密な秤が自動的に行われているのは見事であった。5階にはハスキ
ング、ジャムセパレーター、ロースターが設置され、それぞれの作業が行われ、再び、地下1階に送
り戻されレファイナーにかけ られる。バタープレスも地下1階にある。カカオマス、砂糖、(ミルク)、
ココアバターがミキサー で混合されると再び5階に運ばれコンチングの工程にうつる。コンチングが
終わるとストレージタンクにおさまる。非常に精密な計器板がミキサーとロースターのところに設置
され連続自動生産を制御していた。この装置を見て如何にカルレ・エ・モンモンタナーリの技術力が
抜きんでているかを実感した。(それから四半世紀を経てベルギーのヴァンダイク社で憧れのカルレ・
エ・モンタナーリは当時想像だにしなかった。)

2階、3階、4階が2次加工、包装ラインであった。最新のモールディングマシンは見学を許されなか
ったが、カーレモンタナリー製のエンロビングラインは稼働中の全工程が見学できた。1次加工の完
全自動化と比べると手作業部分が多い。多種品目を小ロットでこなさなければならないから当然とい
えば当然であるが、フィーダーマシンがないのでセンターを網の上に乗せるのに6人がかりで行って
いる様子は奇異に感じた。しかし、プレボトミング(pre bottoming)やテールカッティング(tail
cutting)、また、1度、センターをカバーしたチョコレートは冷却され、再び、所定の温度に上げる
という連続自動、温度調整装置は初めて見るものであった。ミラノはパリと違って温度も湿度も高い
ので、温度に対する敏感なまでの配慮がなされている機械であった。この点がドイツ製のエンロバー、
ゾリッヒ(Sollich)やクロイター(Kreuter)との違いである。
モッタのライバルであるアレマーニャ(Alemagnia)で軽い昼食をとった。モッタのアメリカンスタ
イルの店舗のショーケースやカフェとは打ってかわって、これぞイタリアという色彩感覚と採光の違
いに驚いた。アレマーニャの店舗は薄暗く、奥にあるカフェを際だたせるよう工夫が凝らされていた。
深紅の緞帳に同色の椅子の背張り、テーブルクロスはピンクと一分のスキもない。奥手はくすんだブ
ラウンでガラリと色彩の転調を図っているところなど心憎い。
圧巻は食事のあとやってきた。カルレ・エ・モンタナーリの工場に連れて行かれたときだった。

ロッテ向けの巨大なモールディングラインを組み立てている真最中。60グラムの板チョコを1時間に
5000枚、1日、8時間で2400キロの生産キャパだという。モッタが見せてくれなかった最新鋭のマ
シーンを目の当りに見て、ロッテの前途は洋々たるものだと、わがことのように感激した。この芸術
的にまで高められた精悍なマシーンを見ただけで今回の旅行目的が果たせたような気になった。さす
がは、フェラーリ、ブガッティの国だ、と合点した。
モッタで見たエンロバーの冷却、再加熱の連続温調、つまり、チョコレートのクリスタリゼーション
を完璧に行う方法についての説明を受けた。しかし、そ内容は高度すぎてよく理解できなかったが、
エンロバー部分と冷却トンネル部分の部屋の温度が、それぞれ30℃と18℃と大きな差をつけるこ
とが重要であることを知った。イタリアの気候と日本とはよく似ているので、トレモラダ氏の懇切な
説明がありがたかった。

(私が訪れた頃のモッタ、アレマーニャは現在ではもう名前だけになってしまった。中田英寿で有名
になったペルージャにあるチョコレートメーカー、ペルジーナも同様に、今では多国籍企業の大手食
品会社の傘下に入ってしまった。チョコレート業界の多国籍企業は ネスレ、
フィリップモリス(クラフトヤコブススシャールコートドール)、バリーカレボー、カーギル、
フェレッロを指す。)

1965年6月5日。日本チョコレート工業協同組合の重鎮「コロンバン」の先代社長、故、門倉国
輝氏の紹介で飛びきりイタリアの風趣をそなえたパスッテチェリーア(Bar-Pasticceria)を訪れた。
この菓子屋こそイタリアの菓子屋だと、特筆するに値するものだった。その名はサンタンブロージュ
(St Ambroeuge)。ショーウインドーの飾りつけに息を呑む。なによりも色彩がイタリア的である。
この色遣いは真似できない。この店も1965年当時とはオーナーが変わっているが、今日でもその
見事なウインドーのプレゼンテーションは変わらない。バールのエスプレッソの味も変わらない。私
はミラノを訪れるたびにのぞく。この店のスペッシャリティは苦くない酸漿(ほおずき)、アルケケ
ンジ、にフォンダントクリームがけした後、チョコレートを実の部分だけ「どぶ漬け」したもの。何
でも真似する日本だが、まだ誰も真似をしたものはない。

                                        <つづく>

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