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ダイエーの第1回アメリカ食品流通機構研修団(5)

投稿日: 2008年11月10日

ダイエーの第1回アメリカ食品流通機構研修団(5)

13時、農園に到着。

見はるかすかぎりの農園の広さに声もでない。この圧倒的な広さを見たものは日本人なら誰でも自
由化を峻拒するであろうと思った。この農園の中に集荷場と選果場、そしてそのオフィスがある。
いずれも近代的な設備がなされており日本の敵ではない。完全に戦意を失うに十分であった。
都会の空とは違って抜けるようなコバルトブルーの空、強烈な太陽のひかりで気温は40℃に
近い、しかし空気は乾燥している。肌に汗を感じない。自然のコントラストは限りなく美しい。し
かし農園で働く労働者は黒人、メキシコ人、フィリピン人の季節労働者ばかりであった。自然に対
する人間の労働の対比の厳しさに、私の子供の時の記憶が蘇った。これらの出稼ぎ労働者はハシゴ
をかけて、黙々と、ただひたすらにレモンにハサミをいれ、取った実をかごに入れ、かごが溢れれ
ば50ポンド(22キロ)入りの木箱に入れる。この木箱が「出来高払い賃金」のユニットである。
それが僅か80セントと聞いて暗然とした気持ちになった。彼等は1時間あたり3箱を目標に摘ん
でいるらしい。カルフォルニアの最低時間給が1時間あたり2ドル50セントと聞いていたので彼
等の必死な表情が痛々しかった。CAGEの農民の明るさはここにはない。機械で集約的に採果する
のと一個ずつ手で摘むには忍耐が必要だ。

感傷にひたる間はない。50ポンドの木箱は天蓋のない20トントレーラーで選果場に運びこまれ
る。まず水洗いの後、ベルトコンベアに乗せられ、ワックス掛け、サイズ別に選別され、さらに色
のつき具合で分別される。サイズ別、SMLと選外、色味は5種類と選外、都合24種類を選別する
のはここでもCAGEと異なりすべて人手であり、目視に頼っていた。

色味 ストック加能期間

ダークグリーン(かなり濃い緑) 5ヶ月(輸出用として重要)

ライトグリーン(あわい緑) 3ヶ月

シルバー(白黄色) 2ヶ月

ライトイエロー(あわい黄色) 2~4週間(国内向け)

ゴールド(黄色) 2週間(国内向け)

選外品はそれぞれのグレードによってジュース、マーマレード、香料、薬品等に加工される。
15時に農場を出てホテルへ。私はここでもっと調べたかった。はるばる日本から調査に来てサン
キスト側の説明だけで帰るのはあまりにももったいない。夜、メキシコシティーへのオプショナ
ル・ツアーのために早々に見学を切りあげるスケジュールに大いなる違和感をもった。(私はメキ
シコシティーに訪問したかったが18時30分、ホテル出発なので参加しなかった。夜の都会はい
ずこも同じで興味はない。)
古い記憶が今でも鮮明に残っているのは、サンキストグロワーズにもアーモンドグロワーズと同じ
種類の衝撃を受けたことだけである。協同組合のメンバーが6000以上もいることも驚きである
が、その組合員が全員満足していることである。先にも書いたがヨーロッパの協同組合(ヴェラン
コ)も同じ精神が組合員全員に宿っている。

組合本部のマーチャンダイズも同じくトンプソンの大きな貢献がある。農産物で世界ブランドを確
立している。それを支えているものは品質管理である。われわれは品質管理といえばヤンマーとブ
リジストンが受賞したデミング賞を思い浮かべるのが常であった。工業製品ではなく、アーモンド
やレモンでカリブレーション(較正)、鮮度、味の統一化で品質管理を行って、パブリック・リレ
イション、広告の3点セットでマーチャンダイジングを行っていることを知って正に目から鱗の落
ちる思いであった。このころ、日本での勉強は大阪青年会議所の委員会を通じて、日本能率協会か
ら講師を招いてパブリックコミュニケーションについて学んでいた。この言葉の意味も現地アメリ
カで真に理解することが出来た。

<つづく>

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