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「ナショナルブランドとプライベートブランド」(1)

投稿日: 2009年12月7日

「ナショナルブランドとプライベートブランド」(1)

量販店が利益を確保するためには大量販売することに尽きる。同業他社と価格競争をしな
がら生き残るためにナショナルブランドを薄利でも、より大量に販売する必要がある。ナ
ショナルブランド(NB)の出荷価格(原価)は複雑である。建値はしっかりした価格であ
るが、1年間にいくら販売するか目標金額をメーカー・代理店・量販店間で設定してリベ
ートを決める。これを「年契」と呼び予算が、できたか、できなかったかで一喜一憂する。
しかし「年契」以外に達成リベート、累進リベート、占有率リベート、忠誠度リベート、
拡販リベートと様々なリベートがメーカー毎に存在する。メーカーは量販店をこれらの価
格政策を上手に使って囲い込みをはかるのである。建値からリベートを引くとほぼ7掛け
(70%)前後になる。

ナショナルブランドとはメーカーが製造して全国規模で販売している商品という流通業
界の用語である。加工食品メーカーでNBといわれるメーカーの年間売上は1000億円
以上と思えば良い。NBの反対語がプライベートブランド(PB)である。量販店を相手に
販売する商品であるから、NBもPBもマスマーチャンダイズ商品(大量生産・大量広告、
大量輸送、大量消費)である。NBメーカーがPBを製造していることもある。通常のNB
商品のラベルを量販店ブランドに貼りかえたものである。消費者はNBだと思って買った
らPBだったりするものだから、消費者にはPBの意味が明確に理解できない。

60年代のダイエーのPBで10億(単品・年間)売れればバイヤーは大量に買っている
と思っているが、NBメーカーにしてみれば自社の販売量の僅か1%に過ぎないのでバイ
ヤーの要求を真剣に取りあげない。ところが東京産業クラスの中規模生産のメーカーの売
上げからするとそのPB商品の売上げは50%以上を占めることになる。だからどうして
もダイエーの言いなりになってしまう。ダイエーの意向で販売量を急激に下げられると倒
産の憂き目をみる。ここにPBの問題点がある。日本チョコレートの会長、葛野友太郎(モ
ロゾフ社長)は、「ブーム商品は即刻やめろ」という。ブームが去った後はどうするのだ、
と。ピーナッツチョコレートはまさしくブーム商品だった。私はチョコレート業界のカリ
スマと量販店業界のカリスマの間にはさまれ右往左往していた。

量販店の仕入基準はこうだ。PBとは品質がNBと同等かそれ以上のもので、販売価格は
NBより2割安く、かつ粗利は30%以上あることが要求されているということである。
これは極言すれば、PB商品はNBより良質な商品はとうてい期待できないということにな
る。価格と品質の問題は議論すれば果てしない。しかし日本の場合、消費者はNB商品の
品質はPB商品より上質であるはずだと思っている。ここにまた大きな陥穽がある。

たびたび引用している磯部晶策の『食品をみわける』を読めば良質な商品とはどんなもの
かがよく理解できるであろう。同書は暴露本とはほど遠い見識ある表現で、終始控えめな
著述を心がけているようだ。しかし、過去に問題を起こし、糾弾されたようなメーカーに
ついては実名をあげて問題点を明示している。食品で良い品質とはどのようなものであろ
うか。自らが原料をつくり、自らが加工したもの。少なくとも人に食べさせられる品質の
ものを作る技術を習得していることが求められる。良い品質のものはいくら食べても飽き
がこない。このような品質のものを大量に製造して全国に販売することは至難である。磯
部晶策は良い食品の要素として、安全であること、ごまかしのないこと、味のよいこと、
妥当な価格の四点をあげる。この本をダイエーの商品部の担当者や担当課長に配ったこと
は先に書いた。

多くの消費者はコマーシャルにつられて買う。一般の視聴者の多くは、こんなコマーシャ
ルを大量に流しているメーカーだから品質は大丈夫であると考え購入している。乳牛と生
乳のアップ、テトラパックの市販牛乳のCMを見れば、あたかも生乳だと思いこんでしまう。
「どう買わせるか」と「どうつかませるか」はきわどい。海外生活を経験した多くの人々
は日本のNBは本来の味から遠い味だと気づいている。牛乳、アイスクリーム、チョコレー
トの味の差は顕著であることを知っている。その理由は沢山あるが、ここでは詳しい追求
はしない。これら3品の一人あたりの年間消費量は顕著な伸びがない。チョコレートの場
合、1960年代から現在に至るまで年間の一人あたり消費量は2キロそこそこで、劇
的な伸びがないことが全てを語っている。

ずばりその理由は美味しくないからである。また別の理由として表示の問題があると思わ
れる。牛乳、アイスクリーム、チョコレートは業界でつくった業界規約の表示に関して紛
らわしいものが多い。調整乳、低温殺菌、ラクトアイス、マル準チョコレート、等々、メ
ーカーの意図が消費者に明確に理解されていない。極言すればメーカー側の思惑だけで生
産・流通が行われている。いくらマル準チョコレート表示がしてあっても消費者はチョコ
レートだと思っている。そのうえチョコレート表示であっても5%の植物性油脂の混入は
チョコレートと表示しても良いという乱暴な規約である。牛乳、アイスクリーム業界も似
たり寄ったりである。コーヒー牛乳はコーヒーミルクと表示が変わった。表示をなぜ変え
たのか消費者には説明がない。ノンホモ牛乳とはそも何ぞや、という表示が消費者を悩ま
す。

<つづく>

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