2010年02月03日
|
『食の大正・昭和史—志津さんのくらし80年—』 第六十二回 月守 晋
●高等女学校の割烹指導書の西洋料理(2) 『最新割烹指導書』で西欧の家庭料理の定番であるシチュウ、オムレツ、プディングが取り上げられるのは第18課である。シチュウは牛肉・玉ねぎ・ばれいしょ・人参のシチュウ、オムレツは鶏肉と玉ねぎのオムレツ、プディングは食パンとカレンツを使うもの。 シチュウの牛肉は煮出用と具に用いるものをそれぞれ200グラムずつ使う。昭和8年に牛肉の値段がどれほどしたかというとロースが100匁(375グラム)1円25銭7厘([『物価の事典』/『昭和の歴史』別巻『昭和の卋相』では1等牛肉100匁1円26銭]である。 出汁取り用は安い肉を使うとしても牛肉代だけで1円20銭はかかったろう。ちなみにばれいしょ100匁は20銭、玉ねぎは3銭9厘だった。 この指導書では煮出用牛肉を細かく切って1リットルの水に入れ、とろ火で水が半量になるまで煮つめる。次に大切りにした人参、じゃがいも、玉ねぎをシチュウ鍋でバタでいため、そこへ出汁を加え、具の肉を塊のままいっしょにとろ火で煮込む。肉と野菜が軟らかくなったらメリケン粉15グラムを水で溶いて加えとろ味をつけ、塩とこしょうで味付けする。塊の具の肉を取り出し5切れに切って鍋に戻し、温めてから皿に分けてもる。 大阪家政研究会編『最新割烹指導書』は第2学期を第8課「サンドウィッチ・サラド・レモンティ」で開講し第9課は「飯・鱧(はも)と蓴菜(じゅんさい)の清まし汁・なすの鴫焼き(しぎやき)・ずいきの白ごま和え」に移る。 清まし汁に使う出汁の取り方は第5課で昆布の出汁の取り方を既習している。 第2学期第10課以下の献立は第1学期につづき各月の旬の食材を生かしたものに工夫されている。 第10課 小豆飯、鶏肉と冬瓜(とうがん)の清まし汁、れんこ鯛の塩焼(かぶの付け合せ) 第11課 栗飯、松茸となるとえびの清まし汁、鯖のフライ(パセリの付け合せ) 第12課 松茸飯、金銀豆腐と青のりの清まし汁、きんとん 第13課 萩(はぎ)の餅、蛤(はまぐり)の酒蒸し、枝豆、大根おろしの酢の物 第14課 第15課で「正月料理」を学ぶ。第14課で雑煮、煮しめ、御祝儀物(黒豆・田作り・数の子・酢ごぼう)の作り方を、第15課では「一の重」から「與(4)の重」まで多彩な料理を作ることになる。「一の重」は鯛なます、「二の重」は焼物、「三の重」は口取り、「與の重」は甘煮、これほど多くの料理を作るとなると一回2時間の実習ではとても全部はでき上がらなかったろう。 第16課 茶わん蒸し、おひたし、汁粉 第17課 椀味噌汁、筑前だき、あちゃら漬け 第18課 前述 第19課 潮汁、いなりずし、箱ずし 第20課 雛(ひな)節句料理 付録として既習料理を応用した1週間分朝昼夕3食の献立(1~10月)と漬物の漬け方が説明されている。 |
食の大正、昭和史