月守 晋

あの雑誌が創刊号のころ

【あの雑誌が創刊号のころ】■蕾(つぼみ)■

〔あの雑誌が創刊号のころ〕■蕾(つぼみ)■
1999/7/30

「開運! なんでも鑑定団」の人気のもとは、なんといっても司会を務める三人組の絶妙の組み合わせだ。
鑑定依頼者のつけた値段より評価額がぐーっと下がるほうがうれしい、というメインの島田紳助にあまりにも物知らずなために人気がでた吉田真由子、
それに脇に回ってイヤ味を消している、古美術品収集家で画も描く石坂浩二。
イイ男で高価なイイモノをたくさん持っている石坂がメインでは、欲張りのくせに間が抜けていて、だまされてばかりいる庶民大衆の代表みたいな紳助の味が番組に出ることはなかったろう。

古美術関係の雑誌の古手といえば、なんといっても季刊「古美術」だろう。
昭和38年1月の創刊、A4判、112ページ、定価1000円。31-32年の神武景気、34-36年の岩戸景気の後の、所得が右肩上がりで上がっていた時期だ。

「古美術」は収集家というより美術研究家、専門家相手の雑誌だが、創樹社刊行の「蕾」は古美術をふくむ焼き物や美術工芸品の愛好家、収集家を読者に想定した雑誌だ。
こちらは昭和50年12月に創刊号が出た。季刊でB5判、158ぺージ、定価850円。
「小さな蕾」という骨董の月刊誌の姉妹誌である。

巻頭の訪問記は秦秀雄の文で白州正子。白州正子の美術随筆には周知のように、ファンが大勢ついていた。
小林秀雄や青山二郎との付き合いはよく知られているが、つい先年、亡くなった。
薩摩の樺山伯爵家の出で、祖父は海軍大臣・元帥、父親は実業家。幼少のころから骨董に接する機会は多かったに違いない。
骨董は眼を養うことが一番というから、この創刊号に写真で紹介されている収集品も、小さいころから養った眼力を働かせて手中にしたものなのだろう。
室町時代の漆絵大椀や藤原時代の経筒が写っている。

他には骨董好きで知られた井伏鱒二の「硲三彩亭のこと」、藤原審爾「備前焼の昨今」、
安藤次男「文房具小品」、澤田政廣「生活の中の美」など。そして、中のカラーグラビアは谷川徹三の「耀わん・・出口王仁三郎・出口直日の芸術」。
対談「歴史の中のイメージ」は松本清張と由水常雄。
気がついてみると、この創刊号の書き手の多くがすでに彼岸の人である。

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