月守 晋

食の大正、昭和史

食の大正・昭和史 第六十回

2010年01月20日

『食の大正・昭和史—志津さんのくらし80年—』 第六十回

月守 晋

 

●高等女学校で使われていた割烹指導書(4)の2

前回は味噌が歴史的にどのように食べられていたかということに話がそれてしまい、肝心の味噌汁の作り方まで及ばなかった。指導書で解説されている作り方は以下のとおりである。

味噌汁は5人分。材料は白・赤味噌各100グラム、かつお節20グラム、水1リットル、豆腐250グラム(半丁)、ねぎ50グラム(約1本)。

<準備>

1 水を鍋に入れて火にかける

2 かつお節を削る

3 ねぎを切る

4 味噌をする

昭和5~10年ころの日本の家庭では、かつお節を使うときには自宅に備えてある削り器で使っていた。ビニールの小袋に3グラムとか5グラムずつ小分けにされた削りぶしなどはなかったのである。

同じように味噌も使うたびごとに摺り鉢ですって使っていた。大豆の粒が残っていないこし味噌も湯の中でこし綱を使ってよく溶くのがあたりまえだった。

作り方は「水が沸騰してきたらかつお節と味噌を入れ、煮立ってきたらねぎと賽(さい)の目(さいころ形)に切った豆腐を入れ、再び煮立ってきたら鍋を下ろして椀に盛る」のである。

煮すぎると汁が辛くなるし、豆腐も硬くなると注意がある。また使う味噌によって甘味・辛味が一様ではないので適宜量を加減するようにと注意がある。

味噌汁のほかにはこんにゃくと人参・(干し)椎茸の白あえを作ることになっている。

こんにゃく、人参、椎茸を千切りにし、干し椎茸を戻した湯を加えて煮立たせ、味の素(1グラム)、砂糖(20グラム)、塩(2グラム)、醤油(0.3デシリットル/30cc)で下味をつける。こんにゃくはあらかじめ水からゆでておく。

白ゴマ25グラムを洗って煎り、すぐに摺りつぶし、この中に豆腐1丁(500グラム)、塩(2グラム)、砂糖(30グラム)を入れてよく混ぜ合わせ、先に煮た具を加えてよくあえる。豆腐はあらかじめ布巾で絞ってよくつぶしておかなくてはならない。

以上で第1学期の第1課、2時間の実習でご飯と豆腐とねぎの味噌汁、こんにゃく・人参・椎茸の白あえの食事が出来上がった。

第2課は桜飯とかまぼこと三つ葉の清汁(すましじる)、鰆(さわら)と蕗(ふき)の煮付けの実習だ。

桜飯というのは醤油とみりんで味をつけ色をつけた飯である。魚の煮付けには敷きざるか竹の皮を敷いて煮ると煮くずれしないと注意書がある。

この指導書は季節感に配慮して献立が立てられている。

第3課では「たけのこ飯」に筆しょうが、第4課では「えんどう豆飯」に木の芽和え、第5課で「そら豆飯」にキスの吸い物、第6課には「ちらしずし」が取り上げられ、第7課では「アイスクリーム」があらわれるといった具合である。

ひと月に2回、2時間の実習が原則だから「アイスクリーム」の実習は7月、夏休み前ということになる。この実習で「アイスクリーム」の作り方を覚えたこの教科書の元の所有者「松岡サチ」さんも夏休みには自宅でさっそく腕前を披露したかもしれない。

この指導書では第8課に「サンドウィッチ・サラド・レモンティ」の洋風献立が現われ、第18課に飛んで「シチウ・オムレツ・ブレッドプヂング」が取り入れられている。次回ではこうした西洋風献立の料理法をどのように教えているのかを見てみよう。

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