月守 晋

チョコレート人間劇場

石田衣良

2010年04月07日

36「ダイがカーテンを開けると、彼女はリボンのついたチョコの箱を胸のまえに両手で抱えた」
『4TEEN〔フォーティーン〕』石田衣良/新潮文庫

学校がおおかたの10代にとって、行っても楽しくない場所になったのはいつごろからのことなのでしょうか。

それはともかく、学校を楽しい場所にするために最善の方法はなんでも話し合える数人の友だちを持つこと、ではないでしょうか。『4TEEN』の主人公テツローは東京都中央区月島の中学生。

月島は隅田川の河口にある明治の埋立地の島で、勝鬨(かちどき)橋を渡ると魚市場で有名な築地とつながっています。

平成の隅田川両岸には20階建て30階建て50階建てのビルが立ち並び、江戸の情緒の残っていた昭和の面影はほとんど残されていません。

さてテツローにはジュンとダイ、それにナオトという同じクラスの親友がいます。

春休みにはいったばかりの月曜日、テツローはマウンテンバイクに乗り、月島駅の「階段をのぼったところにあるマクドナルドのまえ」でジュンとダイを待っています。待ち合わせの場所は「もんじゃ焼きの店が百軒はある西仲通りのほうの出口」です。

最初にやってきたのはジュンで、テツローものとは色違いのトレックのマウンテンバイクに乗っています。ジュンは背が低く、顔の半分くらいはある黒のセルフレームのメガネをかけています。

待っている2人のうしろの自動ドアが開いて、フレンチフライを胸の前に持ったダイが「よう、待った」と太い声をかけてきます。

ダイのあだ名は本名の小野大輔(だいすけ)のダイではなくて、フレンチフライの大中小のダイで、「うしろから見てもほっぺたの肉が顔の横にでっぱっているのがわかる」ほどに太っています。

3人は聖路加国際病院に入院しているナオトの見舞いに行くのですが、頭髪の半分が白髪になっているナオトの病いはウェルナー症候群、早老症という難病です。

このときの見舞いで病状が悪化していることを知った3人は、図書館で調べて「生存曲線」が30代には「滝壺に落ち込む滝のように」急落すると知って、ナオトの誕生日にとびきりのプレゼントをしようと行動を開始します。

3人がお年玉の残りを資金に難行苦行の果てに調達したのは援助交際の女子高生。

誕生日当日、松屋の地下のフォションで買った「リボンのついたチョコの箱を胸のまえに両手で抱えた」彼女がナオトのベッド脇に立つのです。

それから何が起きたかは原作を読んでみてください。作者は2009年、続編ともいうべき『6TEEN』を発表しています。

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