月守 晋

チョコレート人間劇場

森絵都

2009年12月29日

29. 「アーモンド入りチョコレートのように生きていきなさい」
——- 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』森絵都/角川文庫

この物語には「エリック・サティ<童話音楽の献立表(メニュー)>より」と副題がついています。

登場人物は4人。語り手の「わたし」奈緒と奈緒の通うピアノ教室の絹子先生、レッスン友だちの君絵、それからもう1人“サティのおじさん”。

“サティのおじさん”の本当の名はステファン。フランス人。緑の瞳、銅色の髪、頭はハゲていないし、ひげだってサティほどふさふさしていない。けれど、絹子先生の最愛の人、音楽家のサティに似ていた。顔の輪郭や瞳の光りかたや今にも笑いだしそうな口もとが。

絹子先生と出会って7回目の春、中学生になっていた”わたし”と君絵がそろってレッスンに顔を出していたある日、ふんわりとよせてくるコロンの香りとともに“サティのおじさん”は突然2人の前に“ぽっかりと”現れたのです。

“サティのおじさん”はそれ以後、2人のレッスンに顔を出しつづけます。そして3人はお互いにお互いを認め合うようになるのです。

ことに君絵は国境もことばの壁もらくらくと越えてあっという間に“サティのおじさん”と意気投合してしまいます。

そのきっかけはピアノのレッスンに来ていてピアノを弾かずにうたってばかりいる君絵に、おじさんがそのわけをただしたときに「あたしは、ピアノよりうたうほうが好きだから、うたうんだ」と答えたことでした。

おじさんは君絵の答えにいたく感動してしまい、「日本にもこんな子がいるなんて思わなかった」と両腕の中に君絵をすっぽりくるみこんでしまいます。

この事があって4人の足どりがそろいはじめた6月、週に1度のワルツ・タイムがはじまり、8月の初め、事件が起きます。

事件の内容とその後の展開はこの物語を読んでいただくことにして冒頭に掲げた句。

クリスマスイブの前日に絹子先生宅で開かれた発表会に夏のある日以来姿を消していた“サティのおじさん”が現れ、発表会後のパーティーがお開きになった後、旅立っていく前に言い残していった言葉なのです。

君絵は発表会でもピアノを弾かずにうたをうたったのです。奈緒の伴奏するサティ作曲の「アーモンド入りチョコレートのワルツ」に合わせて。

まわるまわる アーモンド
チョコのなかで くるくるりん <中略>
きょうも あしたも くる くる ぐる ぐる
おどりつかれたら たべられてしまうから

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