月守 晋

チョコレート人間劇場

さくらももこ

2010年02月24日

33. 「……私の手にチョコレートを持たせると、彼女は再び今来た道を……」
「バレンタインデーのこと」/『ももこの話』さくらももこ/集英社文庫

さくらももこの名は「ちびまる子ちゃん」の漫画と共に北の端から南の端まで、日本国中にあまねく知れわたっています。

『ももこの話』はそのさくらももこの9冊目(だと思う)のエッセイ集です。文庫本の帯には「あのころ、まる子だった、ももこの話 3部作③」とあります。

つまり『ももこの話』はさくらももこが自分の子どものころを思い出して書き留めた3部作の3冊目というわけですね。

『ももこの話』は「食欲のない子供」に始まって「春の小川の思い出」に終わる15編の“思い出話”集で、「あれっ、これは私のことを書いたんじゃないの!?」と思わず頭を上げて周囲をきょろきょろ見回してしまう人も少なくないかも知れません。

「バレンタインデーのこと」は小題どおりバレンタインデーに小学5年生だったももこが体験した話です。

ももこがバレンタインデーなどという日のあることを知ったのは小学校五年生の冬でした。それまでは、2月の行事といえば「建国記念日」と「うるう年には1日多い」ということを知っているだけでした。

友人に説明させてどんな日だかを知ったももこは「なんて都合のいい日が男子には用意されているんだろう」と「遅ればせながら驚い」たのですが、「好きな男子に好きですよなどと絶対に言えないタイプ」のももこは「チャラチャラと、好いたホレたなどとたわけた事をぬかして、男子なんかにチョコをあげるなんて、そんなみっともないこと私にできるかよ」という態度でした。

バレンタイン当日、「絶対にもらえそうもない風貌の男子」や「絶対フラれそうな風貌の女子」までが色めきたち、休み時間にはろうかをうろうろする多数の女子や教室でそわそわする男子やチョコをもらってニヤニヤする男子を観察しながら、つき合う気もない女の子からのチョコなんかキッパリ断るべきだと思いながら、サッサと帰ることにして急ぎ足で歩いていたももこを「お姉さんっ」という声が呼び止めます。

声の主はいつもももこが面倒をみている下級生の女の子。女の子はももこの手にチョコレートを持たせると、今来た道を逆方向に走り去ります。

家に帰って家族に一部始終、話をすると「それはすぐ何かお返しをしたほうが」ということになって、ベストをつくしてキティちゃんのハンカチを渡すという展開になります。

今年は自分への「ごほうびチョコ」が多かったということですが、あなたのバレンタインデーはどんな日でしたか。

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