月守 晋

A petty talk on chocolate

■給仕女の商標■

■給仕女の商標■
1999/2/5

アメリカにベーカーズ・チョコレートというメーカーがある(あった、と書かなくてはいけないのかもしれないが)。
ここのトレードマークは、1700年代半ばのウィーンのチョコレート・ショップの給仕女の肖像だ。

この給仕女の名前もわかっている。アンナ・バルトウフといい、父親が貧乏騎士だったから、チョコレート・ショップでウェイトレスをしていた。
この店にオーストリア貴族の息子プリンス・ディトリッヒスタインが当時、最新流行の熱帯の飲み物を試しに入り、アンナに一目で恋をした。

幸いにもこの恋はみのり、アンナはプリンスの花嫁として玉の輿に乗った。花婿プリンスは結婚の贈り物として、花嫁の肖像画を描かせた。
二人の恋のいきさつを知った画家は、モデルになった花嫁に給仕女の衣装を着せたのである。

さて、話は海を渡って新大陸に移る。
アメリカ・マサチューセッツ州のドーチェスターでアイルランド移民のジョン・ハノンという若者が、
ドクター・ジェームズ・ベーカーの資金援助を受けて、ネポンセット川のほとりで小さなチョコレート工場を始めた。
1764年のことだという。このドクターが何の博士だかはわからない。ともかくベーカー(パン屋)さんがチョコレート製造の手助けをしたのだ。

ハノンの工場は成功し、事業は順調にのびたが1779年、ハノンが西インド諸島にココアの買いつけに出かけたまま、行方不明になってしまう。
ドクターが事業を継ぎ、さらにその孫に受け継がれた。給仕女の肖像を商標に選んだのはこの孫のウォルターである。
肖像画の原画はドイツ・ドレスデン美術館に納まっているというが、ウォルターがプリンスとアンナのロマンスを知ったいきさつは不詳である。
(Hannah Campbell “WHY DID THEY NAMEIT・・・?” 常磐新平編『アメリカン ブランド物語』)

TM記

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