2009年05月14日
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14. 「思い切って チョコレートぐらい何とかして ——- 「バレンタインデー」 秋野光子 市立図書館の詩集をあつめた棚で『現代日本生活語詩集』という1冊を見つけました。ぱらぱらめくってみて、いわゆる“方言”で書かれた詩をあつめた詩集だとわかりました。 “方言”ということばではなく“生活語”ということばが使われているのは、「日本各地の方言は、たんなる共通語と対抗するものでなく、その土地の生活に根ざしたことば、すなわち生活語として用いられていることを認めなおしたほうがよい」という観点によるものと編集委員の1人である有馬敲(たかし)氏が「あとがき」で述べています。 冒頭に掲げた2行は大阪府箕面市在住の詩人秋野光子さんの「バレンタインデー」と題した詩。2人の女性の会話が詩になっています。好きな男性のいる1人がバレンタインデーに気持ちをどう伝えたらいいのか、悩んでいます。もし「いらん云いはったら どうすんのん」と。 すると、これに答えてもう1人が励まします。そこまで面倒 見きれん、自分で考えなさい。「あんたが本当にあの男性(ひと)好きやったら 思い切って チョコレートぐらい何とかして 渡せるやろ 渡しいな な!!」 それでも躊躇している前の女性に、多分、同じ会社に勤める同僚と思われるほうの女性が助言します。チョコレートのほかに、「自分の思いを伝える手紙ぐらいは入れておきなさいよ」と。 2人の女性の交わす会話を、そのまま書き取ったようなこの詩は、お気づきのようにいわゆる大阪弁で表現されています。大阪という土地で日常的に使われている生活語で書かれているわけです。共通語で同じような場面を詩にしようとしても、書けないのではないでしょうか。この詩は大阪弁という生活語のもつリズムや呼吸があってこそ詩として成立しているように思えます。 『現代日本生活語詩集』には、Ⅰ北海道・東北・関東/Ⅱ中部・関西/Ⅲ中国・四国/Ⅳ九州・沖縄の4地域、計47人の詩人の詩が収録されています。 日頃、接することのない地方語で書かれているこの詩集を読んでいると、多様さのもつ豊かさとともに、お互いの意思疎通をはかるために果たす言語ということも考えざるをえません。 この詩集には『続編』も出版されています。 《参考》 『現代日本生活語詩集』 |
チョコレート人間劇場