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ダイエーの第1回アメリカ食品流通機構研修団(2)

投稿日: 2008年10月20日

ダイエーの第1回アメリカ食品流通機構研修団(2) 

CAGE本社での研修が終わりアーモンドの農園に向かう途中、昼食をとり、リージョナル型のスー
パーマーケットとセーフウェイの配送センターの見学をした。(詳細は後述する)
農園についたのは午後4時をまわっていた。しかし農園主は根気よくわれわれを待っていてくれた。
60年の樹齢をもつアーモンドの木は10m間隔で整然と植えられていた。9月からの収穫をまえ
にたわわに実った数千本のアーモンドの木々はわれわれを圧倒した。農園の大きさと近代化された
農園の管理は見事であった。

われわれが訪れた農園は4710もあるCAGEの協同組合員の僅か一つである。その農業経営は極め
て合理的に機械化されていた。樹を消毒する、枝を剪定する、アーモンドを地面に落とす、落とし
た実を吸いあげ袋に収納する、これらの作業はすべて機械で行われる。特別仕様の機械は日本製で
あった。

われわれのために上に述べた各工程をデモンストレ-ションしてくれた。私は疎開派である。戦時
中、鹿児島で蜜柑山を開墾して作付けを行った経験があるが、アメリカの農業経営を目のあたりに
して、日本の農業は苦行だと思った。この農園に働く人々のなんと明るいことか。広大な土地、抜
けるような青い空、作業をしていても楽しいだろう。この明るさは何だろう。アンクルトムや怒り
の葡萄のつらさや苦悩はない。

前年の視察と大きく違う点はアーモンド、サンキストの協同組合の歴史的な経緯を耳から聞くと同
時に、農園主や農園で働く人たちを自分の目で観察できたことであった。1910年に230人のメン
バーでこの組織を立ちあげたCAGEは凄い。当時の取扱高は1440トン。1969年度の加盟メンバー
数は4710。取扱高は78270トン。1メンバーあたりの収穫量はそれほど大きくない。
メンバー全てが本部を信じて、自分たちは生産に集中する。本部はメンバーの収穫量を全て買いとって売れ
る製品をつくり、販売に全力を集中する。協同組合の神髄を見た。これはサンキストも同じである。
日本の農協とは大違いである。

7810トンのアーモンドをブルーダイアというブランドのもとに世界を相手に販売する。ブルー
ダイアというブランドが確立している。その根拠になっているのが品質管理である。この品質管理
をマス・マーチャンダイズする仕掛け人がトンプソン(JWT)であった。ここにアメリカのダイナ
ミズムの凄さを見た。
感心する記事ばかりを書いたが、負の記事も書かねばなるまい。この農場に来る途中、数多くの綺
麗に手入れされたアーモンドの樹々の間に「For Sale」(80エーカー、330反、の農地売りま
す)の看板が何枚も掲げられていたのを目撃した。若者が都会の生活に憧れ農地を離れるのだとい
う。戦時中に「三ちゃん農業」のはしりを味わった私には残った老人たちの気持ちがよく分かった。
この「農地売ります」の看板は私を悲しませた。

さて、話を少し戻してCAGE本社工場から農園に行く途中で見学したスーパーについて書こう。
ブルーダイアの計らいで昼食をとったのがジャンボスーパー(Jumbo Supermarket)に出店して
いたレストランであった。サクラメント郊外にある小型スーパーで、いわゆる、リージョナル型の
スーパーマーケットである。セーフウェイのようなナショナルチェーンとは違い品揃えや前陳(シ
ェルフ棚にある商品を前の方へこまめに移動すること)が行きとどき、欠品のため空いたスペース
も少ない。リージョナル型であっても駐車場は2000台位と広い。生鮮3品は巨大スーパーと比べ
ると遙かに充実していた。短時間でこのジャンボスーパーを見てまわった。
そこから直ちにセーフウェイの食品配送センター(Safeway Store’s Inc, Food Distribution
Center)の見学に行った。社長、Ben Mar氏自らわれわれを出迎え、熱心に会社の概要を説明し
てくれた。敷地は77ヘクタール(約10万坪弱)で建坪は11エーカー(約13500坪)もあ
る。パレット用のフォークリフトが90台、大型フォークリフトが19台、従業員は約200名とい
う規模である。カバーするエリアは中北部カルフォルニアと西部ネバダに展開している88店舗と
のこと。

加工食品エリア

加工食品倉庫には480車両分の缶詰、ジュース等が格納されていた。室温は50~70°F
(10~21℃)。ピッキングは伝票を片手にフォークリフトに1ケース単位で積み込んでいた。
すべて人力に頼っている。集められたパレットはそのままトレーラーに積み込む。ここでは野菜
や果物に排気ガスの影響を与えないためと、安全面からフォークリフトはすべて電動であった。

プリパックエリア。

ここには135車両分の野菜・果物が格納され、12基のバナナの貯蔵庫(55°F、約13℃)
を持っている。この倉庫の一角で野菜・果物をプリパッケージしている。機械化されたラインが整
然と配置され1分間に1ライン、200個以上のスピードでパックされていく。1日、5000ケ
ース(300トン前後)を僅か5人で7時間勤務内に片づける。日本と違い1袋1~5キロパック
2台の横ピロー包装機がフル回転している。ここでも「良い品をどんどん安く」のお題目を再考し
なければならないと思った。生活習慣が違うから、日本と大きな格差をつけた価格提供ができる。
それはユニット容量の違いである。購入ユニットは概ね1ポンド(450グラム)である。

保冷エリア

腐敗の早い肉類やバター、チーズの倉庫には30車両分の商品が格納されている。この保冷エリア
は35°F(1.6℃)を保っているとのこと。倉庫へは鮮度調査ため連邦政府の査察官が頻繁に来る
ので3~4日で1回転する在庫しか置けないという。(このような鮮度チェックに日本の保健所は
訪れることはない)。衛生基準を定めたら、それが本当に正しく運用されているかを行政がチェッ
クする。このあたりまえのことが日本では等閑視されている。

冷凍食品エリア

70車両分の冷凍食品が格納されている。庫内温度はマイナス10°F(-23℃)。庫内にはパレッ
ト棚が下から天井までびっしりと積みあげられている。アイスクリームやプディング、その他の加
工冷凍食品は、500アイテムに及ぶ。
ピッキングされたパレットは40フィートのリーファーコンテナに18パレット積み込まれ各店
に配送される。搬入はヨーロッパと同じく夜間に行われる。これも日本では受けいれられない配送
習慣である。1964年パリの中央市場での納入、出荷の喧噪が脳裏をよぎった。パリでは百貨店や
スーパーへの納入も夜間に限られていた。

このディストリビューターセンターの敷地内には鉄道の引き込み線があって歴代の異なる機関車
が7輌も展示されていた。蒸気機関車から電気機関車まで歴史を感じさせる展示品であった。いず
れにしてもその規模の大きさは桁違いであるが、ピッキングから積み込みの時の伝票と現品との凸
合作業(とつごうさぎょう)は1個1個、人間が行っている。着店の時も再度、同じように人間によ
る凸合作業を行ってい る。このプロセスが機械化される日はいつくるのであろうか。

<つづく>

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