■カカオの植物学■
1999/3/15
学名はテオブロマ Theobroma 。theoはギリシャ語の「神、ゼウス」に由来し、broma も同じくfoodを意味する。
つまり、「神の食べ物」だ。アオギリ科の常緑樹で、樹高は4~10m。葉は長さ20~30cmの楕円形で、葉先がとがっている。
花は枝からではなく、幹から直接咲く。直径が1.5cm くらい。ピンクの萼(がく)に、黄色い5枚弁の花だ。
この花が一年中咲くけれども、じっさいに実をつけるのは200 ~300個のうちの1個だけ。1本の木から取れる実は、せいぜい30個だ。
実はラグビーのボールの形。長さが15~20cmほどで、径は7 ~8cm くらい。縦に太い溝がついていて、でこぼこしている。
最初は白っぽい緑だが、やがて濃い緑黄色に変わり、赤みを帯びてきたときが熟したとき。2年目から花がつき、4年目から実を収穫できる。
実の内部は5室に分かれている。それぞれの部屋はねばねばした、白い果肉におおわれていて、その中に卵型の種子が20~50個包まれている。
長さ2.5cm 、幅1.5cm のこの種子が「神の食べ物(穀物)」といわれているものだ。
カカオの原生木は、中央アメリカで4千年前から自生していた。
鳥や猿が好んで果実を食べ、種をそこここにばらまいたおかげで、中央アメリカ一帯に広がった、といわれる。
カカオが育つのは、赤道をはさんで緯度15~20度地帯。年間2000~5000mmの雨量が必要。
カカオは病気や害虫に弱い。伝染力の強い「黒さや病」や芽がほうきのように異常に発達してしまう「魔女のほうき病」など。
こうした病気にかかると、木は腐ってしまう。また茶色い、小型のカメ虫の仲間にとりつかれると、芽や枝を食い尽くされてしまう。
現在、プランテーションで栽培されいるカカオは、取れる種子の特質から、最上質のクリオロ(”土着の”という意味のスペイン語、世界の生産高の5~10%)、最も生産高の大
きいフォラステロ(”よそ者”の意、80%)、そして上記2種の交配種グヤーヴェ。
グヤーヴェはトリニダード島で、自然交配で約400 年前に生まれた新種だ。