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スペインのチョコレート

投稿日: 2004年9月13日

バラエタル・カカオ・ビーンズ(葡萄酒と同じように産地を特定した農園の作物)
については、ボナーが原産地を特定して8種類のチョコレートを生産している
ことはすでに述べた。ボナーは葡萄酒と同じように Gran Cru と呼んでいる。
ボナーが原産地表記のチョコレートを1884年から製造していたがその数量は
たかが知れたものである。スペインの原料メーカー、チョコヴィックがこの原産地の
単一カカオ・ビーンズに照準をあてて、その名も Origen Unico (オリヘン・ウニコ)
として世に問うたのは1996年であった。

オリヘン・ウニコはスペインの料理界の鬼才、フェラン・アドリア(El Bulli)の着想で
開発が進められた。オリヘン・ウニコの成功に刺激され、現在は世界中、同じような
原産地表記のチョコレートが氾濫している。しかし、本当にその表記に値するのか。
オリヘン・ウニコはバラエタル・チョコレートの中にあって今や伝説の中にある。
オリヘン・ウニコが1996年のノーベル賞、授賞式の晩餐会にデザートとして供されたことを見ても衝撃的なデビューであった。

SASがロゴ入りのカレをチョコヴィックに発注したところ、オリヘン・ウニコはPBを受けつけないと、
SASのOEMを峻拒した。SASはオリヘン・ウニコを乗客に提供した。
チョコレートの原料メーカーが消費者用の製品を発売することはタブーである。
チョコヴィックはマスセールを行わないことを自社のお得意先に証明しなければならない。
チョコヴィックはどうしたか。製品にバー・コードを印刷しないことでそれを証とした。
現在の日本の流通界では製品にバー・コードがないと云うことは販売できないということだ。
そのうえ安定供給は保証しません、と云うのだから最初から売っていただかなくて結構です、
ということだ。それでも世の中は広い。それでも好いから売りたいという業者があらわれた。
それはソニ・プラだった。2コンテナを入れた。しかし、発売後、まもなく全品が返品になった。

なぜか、それはチョコレートが完全に密封されていないという理由であった。チョコヴィックと
包装機の改善か、新鋭機を買ってくれと交渉したが、返事は「否」だった。かわりに全品の
シップ・バックに応じてくれた。日本は異星の国であることを印象づけてしまった。

その後、多くのパティシエやシェフからオリヘン・ウニコの引き合いがあった。カリスマ的な
パティシエの第一声は安定供給を要求するもであった。カカオは農産物である。しかも、病気
や虫に弱いクリオロ種やトリニタリオ種である。不作であったり、豊潤なクロップでなければ
チョコヴィックの基準にあわないため原料カカオ・ビーンズの購入を見合わせる。
安定供給は最初から保証できないと答えなければならなかった。

チョコヴィックの親会社は「ネダーランド」である。カカオ・マス、ココア、ココアバターの生産ではスペイン最大のメーカーである。このネダーランド・グループ傘下の会社は次の通り。

チョコヴィック (ノヴァ・クレーム)    http://www.chocovic.es/
カカオ・サンパカ      http://www.cacaosampaka.com/index.html
ダチー           http://www.dachy.es/inici.htm
アウラ・チョコヴィック (菓子学校)
セリーナ・チョコレート
チョコレートといえばスイス、ベルギー、フランスが有名であるが、最も早く新大陸からヨーロッパにカカオを持ち帰ったのはスペインであった。この事実は意外と知られていない。

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