投稿日: 2004年9月8日
1884年創業のボナー・ショコラティエの4代目の社長、ステファン・ボナーはフランスのスキー・ナショナルチームのメンバーであった。ボナー氏はフランス・アルプスのグルノーブルの麓にあるヴォアロンで育ったのでスキーヤーになるのは自然の成り行きであった。しかし、彼がボナー・ショコラティエを継いでからは、ボナー氏はなんとヴォアロンの町の「模型クラブ」の会長に納まったのであった。それは1884年創業当時の機械を毎年、分解して点検・整備をするときのための遠謀であった。当時の機械の部品はこの「模型クラブ」で手作りする他はないからである。
古色蒼然とした年代物の機械が軽快な音を立てて動く。1850年代まではチョコレートといえば飲み物であった。食べられるチョコレートに転換した正にそのときの味を、当時の設備が忠実に再現するのであるから、素晴らしい。カカオの持つ香りそのもの、物性もそのままだ。現代ではアルカリ処理をしてPH(ペーハー)を整える。しかし、ボナーのチョコレートは原産地ごとのカカオ・ビーンズを8種類、それぞれを少量ずつ製造しているので、それぞれの香り、苦み、渋み、酸味、雑味を味わい、楽しむことができる。だから、バニラのような香料や、乳化剤も必要としない。時間を掛けて、少しずつ作るからだ。
各国の放送局がTV取材に来る。我が国のNHKも撮ったらしい。そのときのビデオを誰かに貸して戻ってこないという。そんなことはボナー氏にとって些細なことなのだ。彼にとってはチョコレートとは自分の作るものが、ほんものだ、という信念以外に何もない。「神々の食べ物」チョコレートをつくることが彼のすべてなのだ。
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